マジな!乙女心。(八重垣神社にて)

イングリッシュガーデンを後にして僕と奥さんが訪れたのは八重垣神社という神社。いつも話を聞いているフリだけで乗り切っている僕は到着してもここがどういう神社だか分からず、鳥居をくぐって拝殿の前まで行って、初めて「異変」に気付いた。

女子ばかりなのである。

「なにここ、ハーレム神社?」
「馬鹿。さっき言ったでしょ、出会いを占える神社だって」
「ここがそれか」
道理で。。
実はもう2分近く前の女子二人が顔を上げるのを待っているのである。賽銭を入れて手を叩き、祈る祈る。。恋の悩み、願いは無尽蔵というところか。
奥さんと顔を見合わせ苦笑する。
いい加減にしろよこの貪欲ブ・・・と優しく声を掛けようと思ったらさっと顔を上げて去っていった。
しかし本番はこれから。この神社は祈る神社ではなく、神のご託宣を授かる神社なのである。
具体的にどう神の声を聞くかというと、こうだ。
専用の用紙(薄い半紙のような素材のもの)を購入し、池に浮かべ、真ん中にコイン(十円玉か百円玉)を乗せる。早く沈む人ほど「良縁あり」(願いが叶う可能性が高い)で、いつまでも沈まず浮かんだままならその逆。理想の人は現れない。
この八重垣神社はそんなユーモラスかつシリアスな占いを経験できる神社として、ここ数年、各方面で話題沸騰中なのだそうだ。

この女性客の多さを見れば人気の程が窺えるだろう。もう夕闇迫る時刻だというのに続々人が来る。

この紙を池に浮かべる。

「てかさ・・・」池までの薄暗い道を歩きながら僕は奥さんに言った。
「俺たちここにいるのって・・・違うと思うんだけど」

カップルで来ている人もゼロではないが当然ながらごく少数である。9割が女友達同士で来ている。
「まあね。でもいいじゃん、楽しめば」
結婚した女の余裕からか、さらりと奥さんは言った。
「でも二人ともずっと浮いたままだったら楽しめないよね」僕は言った。
「別れろってことよね・・・」
「お互いふさわしい相手に出会ってないってことだからな」
「なんかドキドキしてきたっ・・・アタシこういうのでいい結果出たことないもん」
確かにうちの奥さんがクジで当たりを引いているところを見たことがない。棒アイスでさえチョコバットでさえホームランを出せないひとである。だからおみくじの類は絶対に買わないのだ。テンション下がるから。
「腹くくろう」

池に着いた。

思いのほか静かである。
もっとこう、「ウソー」「ヤダー」「マジー」「ありえなーい」キャハハハ!な空間を想像していただけに、空気の硬さにちょっと面食らった。
女性たちはみんな真剣だった。
イベントとか思い出作りとか、そんな軽いキモチでないことが背中や横顔から伝わってくる。

ちなみにこの池はただの池ではない。日本神話で有名な稲田姫命(クシナダヒメ:ヤマタノオロチのイケニエにされた8人の娘の末っ子。スサノオが神通力で彼女の姿を櫛に変えさせて、これを頭にさしてオロチを退治した)がオロチの難から逃れるために八重垣を張り、この池で顔を洗ったり髪を洗ったり姿を写したりしたという由緒ありすぎる池である。

だからこそ皆真剣になるのだろう。これが出来合いの池だったらここまで切羽詰った空気になりはしない。
僕と奥さんも人混みを分け入って池の端に中腰になって、紙を浮かべた。
すると、文字が浮かんできたではないか!

僕のは「目的達成する 南と西 吉」
奥さんのは「誠実な人を授かる 北と西 吉」
「『目的』ってなんすか」
「『誠実な人授かる』だってー、わー、きゃー」
「俺以外に・・・って意味じゃないよね?」
「あなたが、誠実になるってことよ」
「ああ、俺がナイスガイに生まれ変わって現れるわけ?」
「そうそう」

結論から言うと、奥さんの紙は3分足らずで池の底へと沈んでいった。その1分ほど後、僕のも沈んだ。僕は南と西の方向に縁があり、(色々ありすぎて何だか分からないが)目的を達成し、奥さんは北と西の方角に縁があり、誠実な人を授かるそうだ。
しかしここでキャーキャー声をあげて喜ぶのはデリカシーがなさ過ぎる。中には口を手で押さえながら沈まない紙を見つめ続ける人もいた。
さらにショッキングなのが、池の反対側には結局沈まなかった紙がコインを載せたまま集まっていたことだ。コインを載せたままそんなところまで流れ着くのだから誰でも沈む訳ではない、ということである。

正直な話、僕が奥さんの話を聞いておらず、拝殿まで来て初めてここが「その場所」と知ったのは、こんな神社をハナから軽蔑していたからであった。来る気もなかった。来ても冷やかして終わり、くらいに思っていた。
大体、現代においてそんなに女性たちが「出会い」を求めているとは思えなかった。ネットでちょっと探せば手軽に孤独を癒せるツールもあるし、晩婚化も進んでいるし、真剣に「シアワセな結婚」を夢見る女性がどれほどいるのか、と訝しんでいた。
僕は10代後半から今の今まで、非常に狭い交際しかしてこなかったので、世の中の女性の平均値みたいなものがよく分からない。少なくとも僕の一番近くにいる女性は若い頃から結婚願望なんてものを全くといっていいほど持っていなかったらしく、そんな話を聞いていると「そんなもんか」と思ってしまう。結婚したくてしたくてしょうがない女、というのを見たことがなかった。
みんなテキトーに出会ってテキトーに結婚してテキトーに子供生んでテキトーな家に住んでいる。そんなもんだと思っていた。
でも僕が目にしたのはその「テキトーに」にすら縁のない人たちで、しかも出来ればテキトーな相手でなくちゃんとした相手とめぐり合いたいと思っている人たちであった。
冷やかし半分で来のに、冷や水をぶっ掛けられたのは僕の方であった。
「うーん、それはちょっと、おめでたいかな」
駐車場へ帰る道を歩きながら奥さんに感想を漏らしたらそう突き放され、僕はちょっとムっとした。
「え?」
「今泣いてるコも、案外明日にはケロっとしてビュッフェとかで馬鹿食いしてたりするから」
「そうなの?」
「そういうコもいるよ。むしろ男のほうが引きずるんじゃないかな」
「・・・・・」

もう、いいや。。

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2015.12.04 | | 行ってみた

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