水切れとサイヤ人

園芸をやっていると、時には水をやり忘れて花をへたらせてしまうこともある。今のように涼しい季節はまだいいけれど、夏場はちょっと油断するとすぐ水切れを起こす。水切れを起こした植物の姿は、さすがに痛々しい。ぐったりと頭を垂れ、葉は縮み、生きることをあきらめた砂漠の放浪者のように見える。

初めて水切れをさせてしまったときなどは、このまま死んでしまうんじゃないかと不安になったが、そのうち、ぐったりしていてもまた水をやれば蘇生することに気付いた。真夏に一週間も放置していたらさすがに駄目だが、夏でも一日二日くらいなら死にはしない。たっぷり水をやれば、元通りシャキっと背筋を伸ばし、何事もなかったような顔をして空を見ていたりする。けなげである。

ところで、これはうちだけかもしれないけれど、一度(水切れによって)三途の川を渡りかけた花のほうが、どことなく前より剛健になったように感じる。
同じマリーゴールドでも、環境的にはずっと恵まれている地植えの株より、幾度となく生死の境を味わったハンギングのマリゴのほうが、株自体も大きく、茎も太いのだ。花つきも断然いい。
春に八重咲きのペチュニアをたくさん買ってきて、数株ずつ花壇とハンギングに分けて植えたのだが、ハンギングのほうはいまだに健在なのに、花壇に植えたほうは今はもうそこにはない。6月ごろから急に弱りだしたのでざっくり切り戻し、養生のためにプランターに移し替え裏庭に持って行った。

この差はやはり、「死への恐怖」ではないだろうか。ハンギングのほうはいつまた水切れにされるかわかったもんじゃないからせっせと花をつけ、種を作り、子孫を残そうと焦る。しかし地植えのほうはまず水が切れる心配がないので、そこまで生きることにどん欲にならない。ハンギングの花がいったん水切れを起こし、蘇生した際にさらにタフになっているのは、そうならなければ今度こそ確実に死ぬ!と本能が次なる危機に備えようとするからかもしれない。


これをスポーツの分野では「超回復」といい、アニメの世界では「サイヤ人パワー」という。前者も後者も意味するところは大体同じである。

筋トレをしている人なら知っていると思うが、人間の筋肉というのは破壊と再生を繰り返すことで大きくなる。運動すると筋肉痛になるが、それは細胞が破壊されたことで生じる痛みである。一度破壊された細胞は、「今度は壊されないようにしよう」と、蘇生する際に前より強くなって再生される。だからバーベルなどをやるときは、自分のフルパワーを出し切ってやっと一回挙げられる重さ(1RM)を記録しておく。これを「最大筋力」というのだが、面白いことに、二日前は60キロが限界だったのが、さらにその二日後には62キロでもいけるようになっていたりする。「超回復」によって、筋力が上がったからである。

これを応用した(と思われる)のが「ドラゴンボール」のサイヤ人で、僕は植物にもこの「超回復」能力が備わっているんじゃないかと思い始めている。

もっとも、いくらベジータが何十倍もの重力空間で血みどろになりながらトレーニングしたおかげで「超サイヤ人」になれたからといって、故意に水切れを何度も起こさせれば「超マリーゴルド」とか「超ペチュニア」になるかといったらそれは・・・多分ないだろう。やってみなければ分からないが、そこまでして花を咲かせたくはない。


とにかく、あまり過保護に育てるより、ちょっとサディスティックなくらいのほうが植物の生存本能を刺激し、発育を促すこともあるのではないだろうか。


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2011.10.26 | | 園芸コラム

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Author:yuhei
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