空虚な「祈り」と「語り継ぐ」

「祈り」とか「語り継ぐ」という言葉がどうしても好きになれない。行為ではなく、これらの言葉の使われ方が嫌いなのである。
8月は特にこの類の言葉が耳に入ってくる。「平和への祈りを」「命の大切さ、戦争の悲惨さ語り継ぐ」「平和の尊さ伝えるため高校生のコーラスグループが公演」「90歳男性戦争体験語り継ぐ、紙芝居で」・・・。
戦争だけではない。東日本大震災関連でも同じような意味合いでこれらの言葉は使われる。日航機墜落事故でも尼崎列車脱線事故でも、地下鉄サリン事件でも。とにかく悲惨で犠牲者の多かった出来事を紹介するとき、マスコミは必ずといっていいほど「祈り」と「語り継ぐ」という言葉を抱き合わせに持ってくる。そういう活動をしている人を取材して、それに乗せてその事件や事故を紹介・説明しようとする。嘘だと思うならNHKの(特に夕方6時台のニュースが顕著)を見てみればいい。これからは毎日そんな特集で時間を潰すはずだ。それで嫌いになったと言ってもいい。
僕はそういうニュースを見るたびに思う。
「誰に何を伝えたいんだ?」と。
毎週・毎月のように見せられているのに、何一つ心に響かないそれらの「活動」。
一番顕著なのが「日航機墜落事故の被害者遺族の慰霊登山」だ。
被害者の方々には同情するし520人もの命が失われたことは記憶にとどめておくべきことだろう。遺族会が事故現場付近まで毎年トレッキングするのも別に構わない。そんなのは彼らの自由である。
問題はそれを報道する側にある。
このニュースは、僕の目には気の毒な老人集団が山を登っているようにしか見えない。50代以上の人には「もうそんなに経ったか」と感慨に耽るニュースなのかも知れないが、恐らくあの事故を知らない、もしくはあまり憶えていない年代からしたら、あの活動、そしてそれを伝えるニュースは「年中行事」以外の何物でもない。
当然だ、テレビ局がそういう風に作っているのである。
あの事故のことを知りたくて、ネットで調べた。
ウィキペディアを上から下まで読んだだけで、あまりの悲惨さに胸が熱くなった。こんなヘヴィーな事故だったのか・・・とちょっと暗くなった。たった4人しか生存者がいなかったこと、生存者は全員若い女性だったこと(そのうち二名は母と子だったこと)、墜落まで30分あったこと、機長やCAたちの凛とした対応、乗客がみな冷静で、パニックにならず、なかには遺書を書きはじめる人がいたこと、事故後、複数の遺書が残骸の中から出てきたことなどなど。。。
物心ついたときからニュースで何十回も目にしてきたにもかかわらず何も感じなかった日航機墜落事故が、ウィキペディアを一読しただけで一気に身近に感じられるようになった。
いかにテレビが漫然と、予定調和にこの事故を紹介してきたか、ということだ。
「今年もまた8月12日がやってきました。○○市に住むAさんは娘をこの事故で失いました・・・」などというナレーションで娘の遺影を持って山登りする老人が画面に映し出されるのだろう。今年もまた。。。
戦争体験者や被爆者の活動も似たり寄ったりだ。
これはテレビの「伝え方」というより、活動をしている当事者の意識がひどい。そんな連中ばかり選んで取材しているテレビ局の「結論ありき」の姿勢も問題ありだが、とにかくひどい。
戦争・原爆関係の「語り継ぎ方」はバカの一つ覚えの「ショック療法」である。
残酷な絵、残酷なセリフ、残酷な写真を見せて子供たちに恐怖を植え付け、平和がいかに尊いか、憲法9条がいかに素晴らしいかを説く。なぜ戦争になったのか、どうやって終わったのか、終わってからどうなったのかはすっ飛ばして、とにかく戦争になったら皮膚が溶けます。くらいの「やっつけ仕事」で片付ける。老人だからって許されることと許されないことがある。
こんなお粗末な「伝承」じゃ何も伝わりはしない。せいぜい「なんだか分からないけどヘーワになったんだネ。ヨカッタネ。日本は1回はひどいめにあったけど、今は見えないバリヤーか何かで守られるようなったんだお、それでヘーワになったんだお」くらいの認識しかもてない。
全国の「祈りたがり屋さん」たち、「語り継ぎたがり屋さん」たちに言いたい。
語るならちゃんと語れ!
「水~水~」とうめきながら徘徊する被爆者の絵を描く暇があったら「あの戦争で日本は何と戦っていたのか」について少しは考えろ。
これからは子供たちに空っぽの「念仏平和主義」がいかに危険かを「語り継ぐ」時代だ。

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2015.08.04 | | 政治

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yuhei

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