PUNKガーデン宣言

当たり前だが、僕が園芸をしているのは家に庭が付いているからである。庭を持たなかったら多分園芸などしていなかったと思う。実際、この家に越してくる前の10年間、僕はアパートを転々としてきたのだが、その間、ただの一度も花苗というものを買ったことがなかった。小さな庭の付いているアパートもあったが、せいぜいトマトの苗を試しに植えてみた程度だった。

この家に越すと決めたときも、別に「この家なら園芸が出来る!」と思って決めたわけではなかった。それどころか「庭があればそこに車が置けるじゃん♪」くらいに思っていた。結局、車を置くにはスペース的に無理があることが判明し諦めたが、そのくらい園芸に興味がなかったのだ。それが2年前の話。

車が置けないなら、じゃあ花壇を作ろうということになり、図書館で大量の園芸雑誌や園芸関係のビデオを借りてきて勉強した。それで一応の基礎知識(土の作り方やら水のやり方やら)は身についたのだが、肝心の「こういう庭にしよう」というお手本になり得るような庭が、どれだけページをめくっても見当たらなかった。参考にしようと思う庭がない。雑誌で「素敵な庭」として紹介されている家は、どれも型にはまったものばかりだったからだ。

地面にはベージュ色の古レンガを敷き詰め、そして中央にはまさに「業者がやりました」感まる出しのサークルストーンを配置し、その中にシンボルツリーとかいってオリーブか何かが植えられている。曲がりくねった枕木のステップを進むとラベンダーやらローズマリーやらセージやらの茂ったこれまたレンガ造りのハーブガーデンがお目見え、そして極めつけは、ローマ字で綴られた表札。どんな字で書こうと「佐藤」は「佐藤」なのに。

そんな超人工的な、業者の見積書が透けて見えるような庭がなぜか「温もり感のあるナチュラルな庭」などともてはやされ、それらをお手本にしろと言わんばかりに紹介されているのである。僕には「ナチュラル」どころか「ナチュラルな部分を全て殺している庭」にしか見えなかった。

しかし世の中の大半の人はこういう「死んだ庭」に憧れている。そしてガーデニングの命であるはずの土の部分を芝生やレンガでつぶし、コンクリート製のレイズドベッドを置いたりする。

これはもう、うちと家のタイプが違うからとか、庭の広さが違うとか、日当たりがどうとか、そういう問題でなく、根本的な価値観の違いである。世の中には型にはまったほうが落ち着く人と、そうでない人がいる。僕は後者なので、人にダサイとかヘンテコだとか素人臭いとか小便臭いとか、お前の家はどっちにしろ古ぼけた日本家屋だからなと馬鹿にされようと、そんな「死んだ庭」には絶対にしないと心に決めた。

 

業者を呼ばなければ実現しない「庭」なんて本当の庭じゃない。
どこかのカフェのようなテラス。お花屋さんのような庭。フランスの地方都市のようなおうち。耳を澄ませば地中海の波の音が聞こえてきそうな白い壁・・・。そういう空間に憧れるのは個人の勝手だけれど、僕は御免なのだ。そんな庭を見るより、日当たりの悪い、狭いベランダで一生懸命イチゴを育てている人とか、ペットボトルを鉢の変わりに使っている人とか、旦那にやらせたために歪んでしまったレンガの花壇がある家とか、そういう苦労や息吹の感じる庭にこそ僕は共感する。
ヨーロッパ直輸入のレアもの品種も面白いが、マリーゴールドとペチュニアとニチニチソウしか植わってない花壇だっていいじゃないか。アンティーク風のプランターだのブリキの水差しだのといったところで、所詮はどこぞのサイトで買った「既製品」でしかない。そんなヤクザまがいの業者に金を払うより、百均に行ってプラスティックのカゴを買って来て、それに水苔を敷いてハンギングでもした方がずっとオリジナリティがあるし、何より見ていて楽しい。
僕は自分の庭をそういう庭にしたい。

名付けるならば、PUNKガーデンだ。素人臭くてヤンチャで貧乏な庭だ。パンクの精神は「誰でも出来る」だった。3つのコードさえ覚えれば、ステージに立って自分の思いを音楽に乗せてぶちまけることが出来る。庭もそうあるべきだ。
リフォーム業者たちが主導する、ひとつもナチュラルじゃないくせにナチュラルを気取った庭なんかクソくらえだ。

 

僕もこれまでよく咲いている花や、背景にあまり生活臭のない、見栄えのする場所を選んで写真を撮ってきたが、それもやめにすることにした。そんなのはリアルじゃないと気付いたからだ。見栄を張ったって僕の庭はしょせんパンクなのだ。狭くて、小汚くて、チープで、ガキっぽい、ふざけた庭なのだ。


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2011.10.07 | | 園芸コラム

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yuhei

Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
「一般教養としてのロック史」管理人。興味のある方は覗いてみてください。ネットショップも地味に
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