家との出会い、未来の思い出

まだ引っ越すかどうかも決めていなかった、2年前のある夏の午後。
何となくネットで借家を探していたら、一軒の物件に出会った。
「庭あり・小屋つき、事務所使用可」
そして小さな画像が1、2枚。
草ボーボーの庭と小豆色のプレハブ小屋が写っている。
奥さんに見せると興味津々。無理もない。この街ではそこそこ広い庭のある借家自体が珍しい。それも小屋つきで事務所使用可とは。
見たい。この目で見てみたい。どんな家なのか。
住所の当たりつけて、不動産屋を介さずに現地へ突撃することにした。暇な夫婦である。ていうか軽い不法侵入だ。

「おいこの通路、手すりがなきゃ何か植えるのにな」
「お隣、モッコウバラ?」

年代モノの門扉が行く手を阻んだ。
「開かないや。閉まってる」

門扉越しに中を覗き込んだ。

「すごいな」
そのとき風が僕の顔の真ん中を突き抜けていった。

風じゃない、何か、かもしれない。
たとえば、家の息のようなものかもしれない。
とにかく押されるような眩暈と引き込まれる力を同時に感じた。
ちょっと怖かった。
でも僕には霊感がない。
まるでない。
金縛りも恐怖体験も予知能力もまったく縁がない。煩悩が強すぎてそれどころではない。
それがこの家はどうだ。
絶対自分を呼んでいる。
それが即座に分かった。こんなことは初めてだった。
しかし半袖の腕に走った鳥肌は恐怖とは無縁の、むしろ素晴らしい音楽に出会ったときに感じるのと同じ、幸福感。
ご機嫌なロックンロール。
一目惚れとかそういうのではなく。
この家に暮らす未来が見えた。思い出のように鮮明に。
この小屋を使う自分が見えた。
雑草を抜き開墾し畑にしている風景が見えた。







けれど即決は出来なかった。
引越しなんて本気で考えていなかったし、二ヵ月後に宅建の試験が控えていた。
「試験が終わってもまだ借りられていなかったら決めよっか」
「うむ」
そういうことにしてその日は写真だけ撮って家に帰った。2ヶ月の間に誰かに借りられる可能性は・・・・あの家の様子を見る限り低かったが、そんなことは分からない。自分たちのような物好きがいるかもしれない。2ヶ月経ってもまだ空き家だったら、さっき感じたシックスセンスは本物だったということだ。
10月。
試験は終わり、自己採点で合格していることを確認して、この家のことを思い出した。調べたら、まだ空き家のままだった。
僕たちはダンボールを集め始めた。

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2015.06.19 | | 園芸コラム

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yuhei

Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
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