見て見ぬ振りの「アーティスト」様たち

僕たち日本人は、誰かに「『いとしのエリー』ってどんな曲?」と訊かれたとき、YOUTUBEを開いて聞かせてあげることが出来ない。YOUTUBEにサザンオールスターズによるオリジナル楽曲は存在しないからだ。あるのはカラオケのイメージ映像と誰も聴きたくない「歌ってみた」。
しかし「レイ・チャールズの『わが心のジャージア』ってどんな曲?」と訊かれれば、さっとYOUTUBEを開いて原題「geogia in my mind」と入れればすぐ「The original song from the album」(アルバムからのオリジナル曲です)という動画が一番上に現れる。それもかなり高音質で。
①宣伝にもなるし、ある程度だけ管理してあとはシェアさせる
②宣伝になろうとなるまいととにかく管理してリスナーから聴く機会を奪う
の違いである。言うまでもなく我が国は②である。

ところで僕は数ヶ月前、雷に打たれたみたいに「TUBE」というバンドが好きになってしまった。そう、あのTUBE。カレンダーの中の青空と砂浜から飛び出してきたようなグループのことだ。
今年は結成30周年とかで、今度、彼らのライブに行く。
ところが、最近行われた彼らのライブのセットリストを見たら、知らない曲がけっこうたくさんある。「にわかファンだから予習しておかなきゃっ」とすぐさまYOUTUBEで検索した。しかしこれがてんでヒットしない。曲自体がアップロードされていない。予習したいならちゃんとアルバムを買いなさい、というわけだ。
これが洋楽ならザクザク出てくる。先日ボズ・スキャッグスが来日したが、彼の名前を英語で入力するだけで、楽曲どころかフルアルバムがそのまま出てくる。オリジナル音源でアルバムごと聴ける。こんなのは洋楽では当たり前。
僕はそれらをMP3でダウンロードして聴いている。邦楽ではそれが出来ない。出来る場合もあるが、8割がた無理である。
なぜか?
JASRACが目を光らせているからである。

この国にはソングライターやアーティストの著作権を一括管理する、日本音楽著作権協会という団体が存在する。通称、JASRAC。
もともといかがわしい団体だが、ここ数年でその悪名は全国区になった。06年に東京のバー経営者を逮捕した「ビートルズ生演奏事件」から始まり、最近では結婚式で好きな曲を流すのも「私的利用」の範囲を超えるから金を払えと全国の結婚秒読みカップルたちに冷や水をぶっかけ反発を呼んだ。
そのJASRACがまたやらかした。
「適切に著作権料を支払っていない」として、飲食店やブティックなど258の施設に対してBGMの使用料を求める民事調停を、15の都道府県の簡易裁判所に申し立てたのだ。(ニュース
つまり「お店で音楽流してるでしょ、著作権侵害してるからお金を払ってね」ということだ。
「繰り返しの催告にも関わらず手続きに応じない施設が多いため、今回の措置に踏み切った」とJASRACの担当者は言うが、当たり前だ。どこの誰がそんな馬鹿な請求に応じると言うのか。
しかしお店でBGMを流すのは著作権の「演奏権」に該当する行為なんだと。著作者に無断で音楽を流すのは違法行為にあたるんだと。
自分の店で自分の好きな音楽を流したいから美容師になった?独立した?
知らねえよ。
JASRACと契約してから音楽流せや。というわけだ。
僕は騒がしい場所が嫌いで、店で爆音でBGMを流されたりすると非常に不愉快な気分になる。特に最近のJ-POP(主にヒップホップ)は、やれ母親を泣かせてしまっただの、キミが大事なこと教えてくれただの、歌詞がキモ過ぎるので流れ出すと店を出たくなる。だからこの「見せしめ」によってキモいJ-POPを外で無理矢理聴かされる機会が減ると思うと正直ちょっと嬉しい。
しかし個人的な好みを別にして言わせてもらえば、こうしたJASRACのやり方は行き過ぎとしか言い様がない。

ここで不思議なのが、JASRACのこのようなやり方ついて、文化人とかアーティストと呼ばれる人たちからなんのコメントも意見も出されないことである。

JASRACというのはアーティストが任意で著作権の管理を委任する代理機関である。アーティストは、自分たちの権利が守られるようにしっかり管理し、使用料を徴収し、分配してくださいよとJASRACに依頼するクライアントである。
彼らがJASRACに重箱の隅の隅までつついて名もない音楽ファンから金を巻き上げて俺たちをもっと肥やしてくれと要望でも出しているのだろうか?
そんな訳がない。
偶然入ったカフェで自分の曲が流れていて「おい、すぐJASRACに電話だ!」などというミュージシャンはいない。勝手にCMで流されたとか、知らぬ間にプロレスラーの入場曲に使われていたとかするなら別だが、どこかの場末のライブハウスで自分の曲をアマチュアバンドがコピーしているからといって使用料を払えと目くじら立てるアーティストはいない。
いないけどJASRACはこうしている今も密偵の如く音楽の流れる場所に潜り込んでチェックしている。もはやアーティストのためでもなく、リスナーのためでもなく、ただただ、「法」のため、予算の為、文部科学省の天下りポスト機関として生き続けるために。
サイボーグとか、ロボットみたいなものだ。
法律が変わらない限り、アーティスト側が何かしら声明なりアクションなりを起こさない限り、この機械は止まらない。
だからこの問題は、JASRACがどうこうより、彼らを「使っている側」、つまりJ-POPのアーティスト様たちの問題でもある。
しかし彼らは口を開こうとしない。たった1行のツイートさえ呟こうとしない。時の首相をヒトラーになぞらえてパフォーマンスしたり、天皇陛下から頂いた褒章をセリにかけるような仕草をして「反体制」を気取っているつもりのどこかの誰かさんも、こういう問題は見ざる聞かざるだ。ご立派なこと。
僕が知る限り、大っぴらにJASRACを批判したミュージシャンは元爆風スランプのファンキー末吉と坂本龍一しかいない。ファンキー末吉は自身の経営するライブハウスにJASRACから請求書が届き激怒。徴収したお金がどういう経緯でどう分配されるか明らかにしろと訴訟まで起こしている。坂本はJASRACが著作権を一括管理することに疑問を呈し、デジタル配信に関しては自分で管理するとJASRACに要望書を提出していた。さらに言うと宇多田ヒカルがJASRAC怖い・・・みたいな内容のツイートをしたことがあったがそれだけ。
この国には「ロック」の意味を知っているミュージシャンは数えるほどしかいない。

僕たちは気付くべきだ。音楽を作っている側の連中が、僕たちから音楽の自由を奪っているという現実に。J-POPのアーティスト様たちの尻を蹴り上げられるのは、僕たちリスナーしかいないということに。アーティストとはただ憧れ、崇拝し、隷属する対象ではなく、代弁者であれと求める対象でもあることを。
そして疑問に思うべきだ。なぜ洋楽なら個人が自由に市販曲をMP3で動画サイトにアップロードしても削除されないのに、邦楽だとされるのか。なぜ僕たちはこんな狭苦しい、意味不明な「ルール」を押し付けられ、従っているのだろうかと。

日本人は従順で遵法意識が強く、法を守ってる俺ってどうよ?と自己陶酔しているような「いいこぶりっこ」もたくさんいる。ちょっと外れたことをしている人を、上から目線で「イイ大人のすることですか」と説教したがる小者もたくさんいる。
そんな民族だから店のBGMでも金を払えなんてヤクザな要求がまかり通る。「俺の店で何を流そうと俺の勝手だろうがクソったれ」という人間がいないのである。
おかしい法律は変えればいい。おかしいルールを押し付けてくるヤツラには「FUCK YOU !」と言おう。
ギターが弾けるなら、言うべきことは、歌うべきことはたくさんあるだろ。

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2015.06.15 | | 音楽

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yuhei

Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
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