「庭は要らない」の愚

前回、「バブル期に建てられた家は「庭」を忘れていなかった分マシだった」と書いたが、僕の両親もこの頃マイホームを買った組で、コニファーの生垣を張り、芝生を敷き、花壇を作り、犬小屋を置いて犬を飼った。
今は古い家を一軒潰して、そこに二軒新しい家を建てる。無論庭はない。無駄な庭をぶっ潰して家を建て、一棟でも多く売ろうという算段だ。 
これが何を意味しているかお分かりだろうか?
人口は減少しているのに、家だけが狭くなっているということだ。何も知らない若いカップルたちが、不動産業界やハウスメーカーの功利主義によって、ゆとりのない住環境で子育てすることを余儀なくされているということだ。
昔(といってもたかだか40年ほど前だ)の家には都市部でさえ必ずと言っていいほど庭があった。家と家の間にゆとりがあった。「人口過密社会」と言われていたのにだ。
それが少子高齢化、人口減少が叫ばれ始めた00年代以降、分譲住宅から庭が「必須」でなくなり、庭付き一戸建てを取り壊した跡地に、「スカイバルコニーのある家」を3棟建てるようになった。マヤカシもいいところだが、「ステキ~」と一目ぼれしてローンを組むカップルがあとを絶たないから、どんどん庭の無い家が増え、周りは田んぼしかないのに隣家の壁まで2メートル、なんて馬鹿な住宅地があちこちに誕生することになった。
 
しかし僕はそういう「ギチギチハウス」に住もうとする人を残念だとは思っても責める気にはなれない。
自分だって園芸に目覚めたのはほんの5年前で、それとてたまたま引っ越した借家に庭があったからであり、それまではカーテン締め切ってイラスト描いたりギターかき鳴らしたり読書したり映画観たりが大好きな「超インドア派」ボーイだったからだ。「鶏ふん」「ぬか」「油かす」などから最も遠い星にいたのだ。
それに今の若い人の中には生まれた頃から家に庭がなく、土の上で遊んだ経験の少ない人もいる。経験はあっても「土が近くにあるとイヤ」「部屋が汚れる」という「嫌土女子」も多く存在する。ハイドロカルチャーや水耕栽培キットのニーズは案外こういう所にあると思う。
そういう人々がマイホームを探すとき、「庭があること」は必須条件では絶対にない。彼らにとって重要なのは、部屋の数、日当たり、収納力、駅からの距離、近くに保育園はいくつあるか、沼地の上に建てられた家ではないか、車は置けるか、床暖房か、壁に断熱材は入っているか、ゴミ置き場は近いか、コンビニまで歩いていけるか・・・である。庭の有無など二の次三の次。
僕もそうだった。前の借家を見つけたとき、「庭」は絶対条件ではなかった。気にしたのは家賃、間取り、お風呂が「ハンドル式」ではないこと、市街地までの距離などで、「庭」はあくまで「おまけ」だった。「庭ある」、ではなく、「庭ある」くらいの意識だった。
そんなヤツが今こうして偉そうに園芸ブログなんかをやっているんだから分からない。それだけ庭というものには魅力というかパワーがあるということだろう。
しかし僕は「お前らも園芸やれ!」「庭のある家に住め!」と言いたいのではない。
庭との出会い(庭の良さを知るきっかけ)を最初から奪い去り、インスタントな、正拳突きしたら一発で穴が空きそうな安っぽい靴箱みたいな家を無知なカップルに売りつけるハウスメーカーや不動産会社の商法に異議を申し立てたいのである。
 
きっとハウスメーカーにはアンケート調査による資料があるのだろう。
そこにはメインの購買層である20代後半~30代の人々が、園芸にあまり関心がないこと、将来やりたいとも思っていないこと、維持・管理が面倒な庭を広げるくらいなら、2人目3人目が生まれたときのことを考えて部屋数を確保して欲しいこと、ロフトやウォークインクローゼットが夢であること・・・などリアルな「優先順位」が書き込まれているのだろう。
だから庭を消す。土だった部分は全てコンクリートで固め、カーポートにする。
市場原理に従って最大公約数を狙っているだけ。
「若いご夫婦は園芸に関心が薄く、庭はそんなに必要ないとおっしゃるんで」
そりゃそうだろう。
しかしこれは若い人が園芸をやる、やらないという話ではない。ましてや若い人に園芸を奨励する話でもない。
上にも書いたが誰がどんな家に住もうと人の勝手である。土が嫌いならマンションに住めばいいし、スカイバルコニーのある家の屋上で洗剤のCMみたいに青空にYシャツパタパタさせたいならそうすりゃいい。
僕が言いたいのは、現代日本の住宅事情は狂っている、ということだ。僕らはどこかで騙されているんじゃないか?ということだ。
今よりずっと人口過密で子供も多く、住宅不足が社会問題になっていた高度経済成長期には入居者が希望しようがしまいが一戸建てには庭が付いていたのに、少子化&人口減少時代の今になって、なぜいかにも「限られた土地を有効活用してます」みたいにギチギチに家を建てる必要があるのか??
なぜ一軒の古い庭付き一戸建てを解体して、その跡地に3棟の狭小住宅を建てなきゃならないのか?
なぜ土地不足でもないのに意味もなく涙ぐましい土地の節約をして、「ここ建ぺい率いくつよ?」と言いたくなる様な無茶な家の建て方をするのか?

勝手な推測だが、結局そのほうが不動産会社が儲かるからだろう。そのほうがワケの分からない金をワケの分からない理屈で浮かせて利ざやを掠め取れるからだろう。ハウスメーカーから地権者、銀行、下請けの施工業者、仲介業者、果ては自治体まで、みんなそこそこ納得出来る仕組みがこれなんだろう。
当の入居者は何も知らずにローンを組んで幸せを買う。「欠陥住宅でなければ御の字」、くらいの意識で。
繰り返すが僕は「お前らも園芸をやれ」と言っているのではない。庭のない家に住むなと言っているのでもない。
現代の分譲住宅に庭がないことを不思議に思ってください、と言っているのだ。
一人の「?」がみんなの「?」になり、ひとつの大きなうねりとなって、同じ地域でも、同じ値段で、もっとゆとりのある、もっと伸び伸びした家を買えるようになるかもしれない。分譲住宅の「標準値」が、25年前の基準に戻るかもしれない。
誰かが決めた「イミフ」に盲目的に従うことほど馬鹿なことはない。
僕らはハウスメーカーに白紙委任状を渡し、全幅の信頼のもと、日本人と日本の風土に合うような家を建ててもらっているのだろうか?それがあの庭のない「ギチギチハウス」だというのだろうか?だとしたらずいぶん国民を馬鹿にした話だ。
産業システムに対する無関心、無知が自分の首を絞めることになると、僕らは気付かなければいけない。
もう2015年だ。
もっと人間らしい住環境を求めてもバチは当たらないだろう。

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2015.06.04 | | 園芸コラム

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yuhei

Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
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