石巻の思い出

僕がはじめて石巻を訪れたのは07年の12月だ。正確には12月24日。クリスマス・イブだ。そこまで記憶しているのは何もロマンチックな思い出があるからではない。当時バンド活動の一環として「電脳戦艦さくら丸」なるホームページを運営していて、そこで、この旅の記録をエッセイとして上げていたからパソコンにデータが残っているのである。

石巻を訪れた目的は「石ノ森萬画館」に行くためだった。名前からも分かるとおり、ここは漫画家・石ノ森章太郎を称えて作られたミュージアムである。石ノ森自身は宮城県の出身なのだが、高校時代によく石巻に映画を観に来ていたという縁でここに建てたれた。施設の中身はファンをうならせるような微に入り細に入ったものではなかったが、「サイボーグ009」の衣装を身につけた受付嬢が出迎えてくれたり、ロボコンがいたり、等身大の仮面ライダーが展示されていたり、視覚的にはかなり楽しいミュージアムだった。
今回の震災で、石巻も甚大な被害を被った。瓦礫の山と化した石巻市内の様子をニュースで見ながら「石ノ森萬画館は大丈夫だろうか?」とふと不安になり、ホームページで確認したところ・・・・「スタッフは皆無事です!」という情報が目に飛び込んできて、ホッとした。

 

写真を見る限り一階部分は汚泥に埋まってしまったようだが、建物自体は残っている・・・。凄い。ここは旧北上川が海へとなだれ込む石巻魚市場の近くの中洲に建てられていたはずだが、どうしてどうして、よく無事に残っていたものである。奇跡というしかない。

 

石巻は僕にとって特に思い出深い場所というわけではない。「石ノ森萬画館」も、数多く訪れた場所の一つに過ぎない。漫画家のミュージアムとしてなら鳥取の境港にある「水木しげる記念館」や宝塚の「手塚治虫記念館」の方が断然優れている。マンガストリートも、水木しげるの境港の方が数も多く、街と一体化していて、飽きさせない。

それでも、少し寂しげな商店街にぽつんと置かれた笑顔の「猿飛エッちゃん」は忘れられない。他のどんなモニュメントも敵わないけなげさ、愛らしさがあった。確かに「エッちゃん」はそれだけで可愛いらしい。だが今になって思えば、そこが東北という土地であることが、その可愛さにいいようのない魅力を与えていたと思う。住民に愛されているわけでもなく(僕にはそう見えた)、かといってぞんざいに扱われているわけでもなく、ただなんとなくそこに置かれているといった風情が、石ノ森章太郎という、今はもうあまり顧みられることのない「昭和」の漫画家の「匂い」とマッチしていた。
東北は切ない。東北は哀しい。東北は寂しい。そしてその切なさ、哀しさ、寂しさに、旅人は知らず知らずのうちに慰められている。


撮影:07年12月


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2011.04.15 | | 時事問題

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