笑ってはいけない「トリコ」

今日はアニメの話。
先日、家の近くのショッピング・センターに行ったときのこと。買い物を済ませて店を出ようとしたところ、うちの奥さんがチラシが置いてあるのに気付いて、手に取った。「もう帰るのにそんなもん見たってしょうがないよ」と言ったのだが、聞かないので放って置いた。
家に帰って、僕が台所で夕飯を作っていたら、居間から奥さんの笑い声が響いてきた。何がそんなに面白いのかと思って様子を見に行くと、さっき店でもらったチラシを見ている。
「ちょっとこれ見てよ」と奥さんが指さした箇所を見ると、オレンジ色の腕のオモチャの写真の下に

「バンダイ トリコ 菓子粉砕器 グルメスパイザー」とあり、さらに
「スナック菓子でグルメスパイスを作り出せ!トリコが劇中で使用するグルメスパイザーが登場!!」と書いてある。

思わず僕も笑ってしまった。「スナック菓子でスパイスを作り出せ!」って・・・この「腕」がスパイザーということ自体信じられないし、子供たちがこれにスナック菓子をぶち込み、あらゆる食材にそれを振りかけるのかと思うと愉快極まりない。
それにしてもこんな馬鹿げたアイテムが登場する漫画ってどんな漫画だよ・・・。まさか「OH!MY!コンブ」の現代版

気になってしょうがないので夫婦揃ってその「トリコ」を見てみることにした。
日曜の朝9時からフジテレビ系で放送されているらしいのだが、待っていられないのでネットで探す。ある情報筋から「グルメスパイザーが登場するのは第11話と12話」という情報を得た。とりあえず某動画サイトで第一話を見てみる。すると、なんと「ワンピース」とのコラボである。第一話からコラボなんてありえない(だって原作ではコラボしてるはずないし)そう勝手に決めつけて「本当の第一話が他にあるはず!」と探したが、やっぱりこれがテレビ版の第一話らしい。ワンピースの人気にあやかって見てもらおうというそのせこさが逆にハートをつかむ。

           
ルフィたち一行が餓死寸前の状態で海上を彷徨っていると、無人島を発見する。さっそく上陸するのだが、来てみてビックリ。なんと木にが実っている!植物と思いきやそれは絶妙なゆで加減のパスタ!と、そこに背中から香ばしい湯気を上げる「豚」がルフィたちに襲いかかる。生きた「焼き豚」である。そこへトリコが駆けつけて助ける。というストーリー。

「世界中の食材に感謝を込めて、いただきます!」。武闘派のトリコは必殺技らしきものを出すとき、合掌してそう決め台詞を吐く。成敗したあとも再び合掌して「ごちそうさまでした」。

そして、それを食う。敵を食う。二十匹くらいの巨大焼き豚に襲われていたが、一匹残らず平らげる。それが、感謝の気持ちのあらわれ。「トリコ」では、全てのモンスターは「食材」なのである。強いか、弱いか、ではない。美味いか、不味いか。それがトリコの価値基準である。(ワンピースメンバーに思いきりつっこまれていたが)

 

見ていると頭ん中が真っ白になる。「OH!MY!コンブ」なんてもんじゃない。それをはるかに凌駕した、天然系格闘ぶっ飛びグルメアニメ・・・。こんなアニメ見たことない。隣で見ていた僕の奥さんも異次元に迷い込んだみたいに目をぱちくりさせていた。

 

2話目~11話目は飛ばして肝心の「グルメスパイザー」が登場するという12話を見た。トリコには助手の「小松」という青年がいるのだが、どうやら別行動をするようになったらしく、その小松君が道を歩いていると、なんと「菓子の木」を発見!今度は木にケーキやクッキーやその他諸々のスウィーツがたわわに実っている。
トリコの世界ではこの「菓子の木」は、「幼児の欲しいものランキング」で5年連続一位になっており、「多くの菓子を付けることから<オークの木>」と呼ばれているという。言うまでもなく、これは「樫の木」の英語名「オーク」とかけた救いようのないオヤジギャグなのだが、不覚にも笑ってしまった。笑うまい笑うまいと思っていても笑ってしまう。

で、その菓子の木を前に、小松君は思い立ったように「グルメスパイザー」をバッグから取り出し、「トリコさん・・・」とトリコからこの「グルメスパイザー」を託されたときのことを思い出す。そして「グルメスパイザー」の使い方をおもむろに説明しはじめる。しかし実はこの「グルメスパイザー」、使い方もへったくれもない。小松君によれば、拳の部分をひねって回して外し、腕の部分に菓子を入れ、また拳をセットして、あとは底部のレバーを前後に押すだけだ。つまり手動。レバーを押すとシリンダーが回って菓子が粉砕される。出来上がったら拳を開いて掌から落とす。
           

 とまあ、こういう漫画なのだが、※原作は読んでいないのであくまでアニメを見た印象から僕の率直な感想を言うと、近年稀にみる自由な発想に基づいた漫画だと思った。いやマジで。

「少年ジャンプ」の採用基準はリアリティではない、絵の巧さでもない、というのは「バクマン」でも強調されている通りだが、それが単なる「モットー」ではないことを、この「トリコ」が証明している。と僕は思う。作者・島袋光年は正直、絵はあまり上手くない。彼のデビュー作「世紀末リーダー伝・たけし」が連載開始されたとき、同級生が「ラッキーマンが終わったと思ったら今度はこれかよ!」と言っていたくらいだ。(ラッキーマンの作者・大場つぐみ、じゃなかったガモウヒロシも絵の下手さで有名だった)

もちろん、「ジャンプ」は鳥山明や荒木飛呂彦をはじめ井上雄彦、小畑健、桂正和など超絶技巧派の漫画家もたくさん輩出しているが、それら「看板漫画(家)」に奴隷的拘束・および使役を強要(笑)する一方で、アイデアとユーモアしか持っていない下手っぴ漫画家の「居場所」もしっかり確保し、育成することを忘れていない。「ジャンプ」にもいろいろ問題はあるだろうが、そこは素直に評価していいと思う。(バクマンの受け売りめいていてやだなー)

ツッコミどころが多いということは、よく言えばそれだけ常識や定石から逸脱しているということであり、自由な発想が生きている、ということでもある。僕は常々この「自由さ」「荒唐無稽さ」こそが漫画の命だと思っているので、「トリコ」を見て久しぶりにそのことについて考えさせられた。

たとえば、永井豪の「マジンガ-Z」の主人公、コージ君(兜甲児)は、本気で世界を救う気があるようには到底見えないが、漫画だからそれでいいのである。その世界だけでしか通用しない専門用語を台詞の中に頻発させたり、論理破綻するのが分かりきっているのに無理して衒学的な世界観を構築したりというのは、大人の自己満足。もっと言えばオタクの自己満足。

 

リアルでもないリアリティを重視した漫画など退屈なだけである。ましてや子供が真似しようと思わない漫画など漫画ではない。少年漫画なんだから「子供だまし」でいいのだ。
そういう意味で、「グルメスパイザー」には古き良き漫画の純粋性が宿っている気がする。



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2011.08.04 | | 二次元

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