ムラと組織力

サッカー女子ワールドカップで、なでしこJAPANが3-1でスウェーデンを下し決勝に進出した。快挙である。それまで女子サッカーにあまり興味の無かった僕も、他の多くの国民と同じように準々決勝まで進んだことで注目し始め、ドイツに勝ったと知ってすっかり彼女たちのファンになってしまった。単純である。選手の多くは給料も出ず、昼はバイトで生計を立て、夜に練習するという恵まれない環境にあるそうだが、それでワールドカップで決勝までいってしまうのだから大したものだ。
日本サッカーの持ち味は「組織力」だとよく言われる。個人技に走らず、一人一人がチームを意識し、チームの勝利のために貢献する。言うなれば「全員サッカー」だ。メッシやネイマールのような、自然とその選手に目が行ってしまうカリスマ性のある選手は少ないが、じわじわペースを奪っていって、相手がシビレを切らしたところでベンチの選手を投入し、チャンスを作る。これが日本の勝ちパターンだ。

「素早い動き出しでタイミング良く出たら、澤さんからいいボールが来た。あそこしかないというところだった。ずっと練習していた形。私が得点した形になったけれど、みんなのゴール


これはドイツ戦でゴールを決めた丸山柱里奈選手のコメントだが、「みんなのゴール」と言ってしまうところがいかにも日本人らしい。しかしそう言って当然の、確かな連帯感を感じさせる地に足のついた試合運びだった。実際、このゴール自体が強い信頼関係がなければ成り立たない、「あうんの呼吸」によるゴールだった。

 

しかしスポーツでなら輝かしい成果を生み出す「連帯感」や「全員参加」の精神も、こと政治や原発の話となるとたちまち、「天下り」「隠蔽体質」「システムへの盲目的依存」というハットトリックを決める元凶となる。
最近出版された宮台真司・飯田哲也共著「原発社会からの離脱~自然エネルギーと共同体自治に向けて~」(講談社現代新書)という本では、今や脱原発のホープとなった飯田哲也氏と宮台が、国・行政・企業・・・といった、およそ組織と名の付く集団に蔓延する「ムラ意識」(の弊害)を考察し、告発する。
まあ、別に紹介するほどの本ではないのだが、なでしこJAPANの試合を見ていたらこの本のことを思い出したので引き合いに出すまでである。

要するにこの本を通じて二人が訴えたいのは、場とか空気とか情緒とか、義理とか人情とか、そういった不合理で非科学的な馴れ合いのなかで原発なんかやっていたからこんなことになった。このようなムラ意識を脱却しないかぎり、また同じことが起こるばかりでなく、日本人の思想的貧困(主に自然エネルギーに対する無理解)は改善されず、中央集権的な垂直統合型の体制依存体質も治らない。
といったような具合で、超・超・簡単に言ってしまえば、そんなうざったい「空気」とか「馴れ合い」を重んじる習慣のないスウェーデンやドイツみたいな国にしようぜ!その第一歩として、まずソーラー発電から始めよう!・・・・・ということ。

しかしそれほど<右へならえ>的な「空気」を糾弾する宮台さんも、今現在日本を席巻している「脱原発」という「空気」に対してはノータッチ。僕からするとメディアの「節電大合唱」やサヨクの「原発アレルギー」のほうがよっぽど非科学的で不合理な「空気」に感じるのだが・・・。自分たちにとって都合のいい「空気」ならどんなにヒステリックで直情的なものでも大歓迎ということなのだろうか。ま。それはいいとして、僕の結論はこうだ。

 

確かに日本人はお上の言うこと、メディアの報道することに盲従しがちで、異議申し立てをするより泣き寝入りをする方を好む、事なかれ主義的な民族だ。「和」を重視するがゆえに、「空気」や「ムード」で物事を決めてしまうし、その結果、「馴れ合い」に染まって明らかにおかしなことでも見て見ぬ振りをする。これではいかん。・・・その指摘には全く同感だ。しかし、だからといって諸手を挙げてドイツやスウェーデンを見習おう!という気にはなれない。
こんな国でも日本には日本のいいところがあり、優れた面がある。そういう所を無視して、悪い点だけをあげつらって、だからヨーロッパを見習いましょうというのはいかにも古臭い、左翼的な手法だ。リベラリストだったらもっと斬新な角度で問題を斬り、こちらの目を開かせて欲しい。
スポーツと政治は違うのは百も承知だが、なでしこJAPANはそんな「進んでいる」ドイツにもスウェーデンにも勝った。試合後、スウェーデンの選手たちは呆然自失の体だった。自分たちが負けたことが信じられないという風だった。白人種は、有色人種に負けるといつもこうなる。
「チーム」もひとつの「ムラ」だが、そのいい意味での「ムラ意識」が「団結力」という力となって、いま、日本のサッカーが世界を「あっ!」と言わせているのは間違いない。



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2011.07.17 | |

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