ニュースは誰のもの?

「FNNスーパーニュースアンカー」という番組(通称アンカー、またはニュースアンカー)がある。これは関西テレビで平日の夕方五時から放送されている報道番組なのだが、残念ながら関東では放送されておらず、関東人がこの番組を見るには、ネットに頼るしかない。主にニコニコ動画に一日遅れでアップされ、僕はその「一日遅れのニュース」を貴重な情報源として重宝していた。しかし最近、その「ニュースアンカー」が、ニコニコ動画から削除された。削除された動画にはこんな説明が付いている。

 

この動画は関西テレビ株式会社の申し立てにより,放送事業者の権利侵害として削除されました。

 

僕が一日遅れでも「貴重だ」と思えたのは、「アンカー」が、関東のニュースでは絶対に触れない、もしくは黙殺されるニュースを取り上げてくれていたからだ。
関東では同じ時間に安藤優子アナが司会を務める「FNN
スーパーニュース」が放送されているが、それと比べると、いかに関東人が粗悪な、そしてレベルの低い「報道」を見せられているかよく分かる。同じ「8チャンネル」でも、「スーパーニュース」が20分かけて「夏の紫外線対策」やら「行列の出来るワンコインランチ特集」やらを放送しているときに、「アンカー」では福島第一原発の内部映像と吉田所長のインタビューを流したり、中国とベトナムが戦争一歩手前にあることなどを詳しく報道している。その差は、ほとんど北朝鮮と韓国ほどのものだ。言うまでもなく、関東が北朝鮮である。
実際、動画のコメント欄には「うp主に感謝!」「いつもありがとうございます」など、アップ主への感謝の言葉が絶えない。好きな歌手の貴重映像や幻のアニメの映像に対して感謝の言葉が絶えないのならまだ分かるが、関西では当たり前のように放送されている、しかも報道番組に対してこのコメントである。いかに在京キー局の流す「情報」が国民に飢餓感を与えているか分かるだろう。
しかし動画は削除された。少なくとも僕は今現在、ネットで「ニュースアンカ-」を観ることが出来ない。上にも書いたとおり、その理由は「放送事業者の権利侵害」というものだ。「放送事業者の権利」というのが一体何のことかよく分からないが、まあ、著作権侵害のことだろう。そういうことにして話を進める。

 

で、ここで僕が問題にしたいのは、ニュースは誰のものか?

 

ということだ。
(注)僕は法律家ではないのでここからは素人の所感として読んで頂きたいが、

ニュースとは即ち「情報」である。確かに「ニュースアンカー」という番組自体は関西テレビのものだ。だからそれを無断でネット上に流出されるのはなんらかの「権利侵害」に当たるのだろう。しかしその「権利侵害」の悪質性はどうかというと、常識的に考えて、それほど高いものとは思えない。番組の性質上、恐らくアップ主だって商用目的で複製しているわけでもないだろうし、ユーザーとしても求めているのは「情報」(とそれによるちょっとしたカタルシス)なわけで、その動画がよからぬことに利用される可能性はAKBの映像やテレビ放送中のアニメの映像などよりはずっと低いだろう。それに番組によっては不正にアップロードされていても放置されているものもあり、何が良くて何が悪いのかという線引きも非常に曖昧、「アンカー」だけが削除される合理的な理由が不明である。
そもそも「アンカー」がアップロードされてしまうのは、住んでいる地域によって情報の質に優劣がありすぎるからだ。同じフジテレビ系列の報道番組であるにもかかわらず、西と東で番組の内容に差がありすぎ、これが関東の視聴者の不満を買い、それが結果的に「ニーズ」になっている。不正にアップロードされたくなかったら、関東でもまともな報道番組を作れば良いだけの話だ。欠乏感が欲求を生み、欲求が不正行為を呼ぶのだ。

また、「公共の利益」という観点からも、国民には幅広い情報が必要だ。特に今のように、国民の生命・財産を鼻クソくらいにしか思っていない「人でなし集団」が権力を操り、そんな権力に盲従することを「ジャーナリズム」と思い込んでいるメディアが電波を牛耳っている時代では尚のこと、正しい現状認識を持つための「情報」は、ありすぎて困るということはないはずだ。

福島第一が爆発しても、キー局では「SPEEDIを出せ!」と声高にいう人間はほぼ皆無であり、教育テレビで「ETV特集 ネットワークで作る放射能汚染地図」が放送されてはじめて多くの国民(特に福島県民)は放射能汚染の実態を知るという有様だった。これが健全な民主主義の姿だと言える人がいるなら見てみたい。健全な民主主義というのは、国民一人一人が自分の頭でしっかりとした判断が出来るよう、メディアが権力にとって都合の良い情報、悪い情報も偏りなく公正に国民に提供し、そのうえで国民が「よりこの国のためになる」と思える選択をする社会のことではないのか。

こう熱弁すると、「お前は「アンカー」のスポークスマンか」「著作権侵害を推奨するのか」などと言われそうだが、著作権侵害をすることで国民が正しい判断を出来るようになるのなら、著作権など侵害して構わないと僕は思っている。

というのも、世界のテレビ局はもう著作権などというつまらない既得権益にしがみついてはいないからだ。イギリスではBBCが2007年に「I player」(アイ・プレイヤ-)を、アメリカではFOX、NBC、ABCといった三大テレビ局が手を組んで08年に「hulu.com」(フールー)を開設した。これらはいずれも人気ドラマや昔の映画を無料(!)で見せるオン・デ・マンドサービスである。日本からは視聴できないので詳しくは知らないが、コンテンツの中にはニュース番組もあるに違いない。BBCの会長などネット進出に当たって、「もはやBBCはテレビ局ではない!」と、「脱・テレビ宣言」ともとれる発言をしたほどである。こう海の外を眺めてみると、夕方のニュースをちょっとアップされたくらいで訳の分からない「権利」を盾に動画サイトから削除させるなんてことをしているのは日本と中国くらいのものなのではないかと思えてくる。少なくとも英・米は、著作権侵害で削除させるどころか、テレビ局自らが「ユーチューブ」に「ニコニコ動画」になろうとしているのが現状だ。どこかのテレビ局も「NHKオンデマンド」とかいう、サービスを開始したが、閉店間際のスーパーの総菜売り場みたいなスカスカのコンテンツで一本200円もぶんどろうと(受信料と合わせると二重取り)しているのを見ると、「BBCの爪の垢でも煎じて飲め!」と言いたくなる。それに価格について言えば半額シールを貼っているだけスーパーの総菜売り場の方がずっと消費者の気持ちが分かっている。

長くなったが、とにかく「アンカー」の削除は愚かであるばかりか非常に後退的な現象と言える。もはや電波の時代は終わったのだ。これからはネットで評判のいいコンテンツ(番組)は、月額数百円で販売するか、無料開放してそこでの広告収入を得るビジネスモデルに転嫁した方がテレビ局の為である。



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2011.07.03 | | TV・メディア考

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