大河ドラマ「平清盛」~脚本家に言いたいこと~

8日から始まったNHK大河ドラマ「平清盛」にはほんの少しだけ期待していた。最近の大河ドラマは女子更衣室から一歩も外に出ない<ガールズトーク大河>ばかりだったので、もう少し硬派なものが観られるかなと思ったからである。
しかし今のNHKの手にかかれば、そんな僕の期待を粉砕することなど朝飯前。結局、前半三十分観てテレビを消さざるを得なかった。
別にどこぞの知事のように「画面が汚い」と思ったからではない。脚本がひどいからだ。
ドラマは白河法皇の子を宿した白拍子(遊女)が逃げ出し、それを平忠盛が保護する(その遊女の子が清盛)という設定で始まる。
それはそれでいいのだが、問題は中井貴一演じる忠盛の人物設定である。この忠盛、武家のくせになぜか人を殺すことに苦悩を抱いており、ことあるごとに人の命を奪うとはどういうことか自問自答し、煩悶するのである。道端で子供の乞食が泣いているのを観ては立ち止まって物思いにふけり、助けた遊女に「なぜ人を殺めるのか」なんて説教されてショックを受けたり・・・。挙句の果てには血のついた自分の服を握りしめてこう叫ぶ。
「落ちぬのじゃ!何度洗っても落ちぬのじゃ!」
・・・アホかと。

確かに武士だって人間だ。好きで殺生している訳ではないだろう。そんなことは普通の視聴者なら百も承知であり、わざわざ台詞で弁明する必要はない。目をそむけさせるなり、握りこぶしを震わせたりすれば済むだけの話である。それが「演出」というものであり、そもそも、「弱さ」をさらけ出すことでしか<人間味>とやらを表現できないような脚本家は無能である。

怒りや妬み、下心、名誉欲、劣等感・・・人間には色々な感情や側面があり、それらが合わさってその人の「魅力」を形成している。血を見ても何も思わない男で何が悪いのか。この藤原有紀という脚本家は「そんな男が遊女を拾ってかくまうはずがない!」と考える、役人のような四角四面のお人かもしれないが、矛盾のない人間など存在しないし、だからこそ人間は人間なのである。矛盾が意外性を生み、意外性が共感を生む。

「優しさ」や「慈しみ」といったポジティヴな内面がなければ人にあらず、などというのは、現代人の勝手な思い込みであり、幻想である。冷酷非道な人物より温かみのある人物のほうが視聴者の共感は得られるだろうが、そんなつまらん打算を働かせる暇があるなら、もっと多面的に人物を照射する工夫をしろ。と言いたい。

最後に、このドラマは小道具にとても凝っているそうで、生え際が目だないカツラを用いたり、衣装にはストーンウォッシュを掛けてわざと古びた感じにしているそうな。(→参考記事
細部の「リアリティ」にかまけて一番大事な<総合的な面白さ>を忘れるのは日本人の陥りがちな<負けパターン>だが、この際だからこういうマヌケな連中に一言言っておこう。
誰もそんなとこ注意して観てねえから!!!
目につくことがあるとしたら、前髪があるとか、よほどチープな衣装を着ているとか、CGが北朝鮮並だとか、そういうときだ。それに、たとえどんなにチープなセットでも衣装でも、面白ければ人は観る。
「スターウォーズ」のデス・スターなんて卓球台にゴミを載せただけの代物である。

はあ~、もう二度と「花神」や「獅子の時代」や「武田信玄」みたいな<神大河>は作られないんだろうな・・・。


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2012.01.15 | | TV・メディア考

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