偽善のカタルシス

【浄化】という言葉は、汚れを落してきれいにすること、清浄にすること、という意味だが、人間の心の浄化のことを「カタルシス」という。映画やドラマや小説の世界に感情移入すると我々は泣いたり笑ったりするが、それによって日常生活でこびりついた心の澱を洗い流し、快感を得ている。アリストテレスはこの精神作用のことを「カタルシス」と呼んだ。
現実に汚れた物や人を洗い流す「浄化」と、カタルシスとしての「浄化」。
最近のニュースを見ていると日本はこの二つの「浄化」の間を行ったり来たりしているように見える。
このあいだ、たまたまテレビを付けたら2016年の話題になったニュースを振り返る番組がやっていた。第何位だかに「ベッキーさん不倫騒動」がランクインしていた。その際に、彼女の顔が画面に出たのだが、よく見るとイラストであった。そしてほとんど誰も何もコメントせず、ニヤニヤしながら頷いたりするだけで、次の順位に移っていった。あたかも犯罪者かプライバシーを保護する必要のある一般人のような扱いであった。
僕は彼女に何の好意も好感も持っていない。(どちらかというと嫌いである) だが、
いま、西暦何年よ???
と呆れてしまった。
もうすぐ2017年だぞ。
妻帯者と恋愛しただけでこんなあからさまな村八分を平然と行い、それをお茶の間に流すテレビ局・芸能界とはなんと下劣で前近代的な世界であることかと。
大体、一体どれだけの国民がそこまでしろと望んでいるのだろうか?
彼女がテレビに映ったら「何で出すんだ!」「引っ込めー!」「気分悪いわ!」と思う人が一体どれだけいるというのか??
問題はそこである。
ほとんどの国民は今さらベッキーなんかどうだっていいのである。
彼女がまた以前のようにCMやコメンテーターとしてテレビに現れても、大半の国民は「へー」と思うだけである。僕たちはもっとほかに頭を使うことがあるのだ。
つまりテレビ局に苦情を入れるのはある特定の、限られた人たちである。全国民の0.何%かの人たちによって、過剰なルールが作られ、偽善の壁が築かれてゆく。
不寛容の快楽。
「ベッキーを許さないこと」をライフワークにしているような人間がいるのだ。
大麻に関してもまったく同じ構図の「偽善の壁」が立ちはだかる。
ゲイの俳優が大麻を吸ったか吸わないかが問題になって、彼の出演していたドラマがもう放送できないとかなんとか大騒ぎ。このドラマには同じく大麻で捕まった女優も出ていたから、数シーズン分はまるまるNGになる。
こんな馬鹿な話は日本でしか聞けない。
葉っぱくらい誰でも吸っている欧米でそれをやったら、ポップカルチャーそのものが死ぬ。スポーツも死ぬ。アマゾンからアイ・チューンズ、タワーレコードからほとんどのレコード、映画が消える。
不祥事に対して、日本という国は「臭いものにフタ」が一番だと思っているフシがある。
大麻を吸っても不倫をしても、とにかく「消えてもらう」。出演作もCMもポスターも、テレビから店頭からラジオから、消し去る。
僕は洋画や洋楽が好きだから、ドラッグで身を滅ぼした海外の俳優やミュージシャンをたくさん知っている。ガールフレンドを殺したり、自殺したり、殺されたり、ろくなもんじゃない。死なないまでも、その転落ぶりや目を覆いたくなる俳優やミュージシャンは数え切れない。
しかしだからといってそのミュージシャンのアルバムを発売中止にした、その俳優の出演した映画やテレビ番組を放送自粛する、なんて話は聞いたことがない。
不倫したから、大麻を持っていたから、なんてツマラン理由で発売しなくなったら、それこそ「ふざけんな!」と逆に怒りの声が上がるだろう。
よく聞くのはむしろ逆で、元バンドメイトがドラッグで身を持ち崩した元メンバーをライブにゲストで呼んだとか、そいつの治療費を集める為のパーティを開いてあげたとか、「救う」方向の話だ。「隠す」のではなく、むしろ皆に紹介する。社会に戻そうとする。ドラッグに手を染めた人間を「臭いもの」だと思っていないので、フタをするなどという感覚がない。大体、そんなことしたって逆効果なのを欧米人は知っている。
酒井法子の元旦那が再逮捕されたが、逮捕&離婚後、彼は底辺のさらに下の地面のホコリのような人間になっていた。所持金もほとんどなく、クズ以下のクズになっていた。
それで結局、危険ドラッグの売人という「職」を得て、また手を染めてしまった。
清原もそうだ。あれだけの花形選手も、奥さんと子供に会えないと白痴になる。少年野球のフェンス裏で立小便するほど自分を失う。
「孤独(感)」が、人の弱さをむき出しにさせる。
僕は大麻や薬物を肯定したい訳ではない。ただ、職を奪ったり、社会から放逐することでその人物が更正することなどない、と言いたいのだ。
「村八分」など、周りの人間が「見世物」として楽しんだり、自分の優位を確認したりする為の材料にするくらいのものでしかないのである。
それが目的で日本人は「臭いものにフタ」をしたり「村八分」にしたりするのだとしたら、そんな国はクソである。
仲間外れ、シカト、陰口、キレイゴト、建前、無意味なルール、暗黙の了解、同調圧力、制裁措置、空気、空気、空気。。。

人の転落を高みの見物してカタルシスを得る、そんな歪んだ心の持ち主たちが、今日も獲物を狙って徘徊している。
なんて思いたくないのだ。

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2016.12.22 | | 時事問題

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