歯医者難民

同僚のA君が歯が痛くなって、診てもらったら親知らずを抜くことになった。それからすぐ、奥さんも詰め物が外れかけて「どこかいい歯医者ないかしら」と言うので僕が去年行った地元の歯医者をオススメした。
「沢田研二に似てるんだ」
それに、衛生士さんの物腰もタッチも柔らかい。口の端っこを引っ張ったりしない。
「ふ~ん、なら一度行ってみようかしら」
「俺の紹介ですってちゃんと言えよ」

二時間後、奥さんが帰ってくるなりバッグを放り投げて言った。
「あれのどこが沢田研二なのよ!どの部分がよ!」
「え?」
「ただの太った、熊みたいなオッサンじゃない」
「今の、沢田研二だよ」
「今の、でも違いすぎるから!」

顔がジュリーに似てないというだけでなく、他にもその歯医者が気に入らない理由がいろいろあって、結局奥さんは違う歯医者を探すことになった。
「あの沢田研二、説教するんだもん。『前歯の汚れも落として下さい』って言っても、『僕は後ろの歯と前歯を同じ日にやらない。職人だから』とか言って、やってくんないし!」
これで何軒目だろう、彼女が歯医者を変えるのは。。。
奥さんは歯医者難民である。
どこに行っても折が合わない。ネットで評判のいい女性の歯科医のところに行けば「よくこんな歯で・・・」と言わんばかりの蔑みの態度で接せられ、あげくに自分より遅く来た客を優先された。
「じゃあ」といかにも標準的に見える駅近くの歯医者に行ったらこれがヘタクソなクセに決して自分のミスを認めようとしない若い歯医者で、さらに隣町の歯医者に行けば今度は待合室が小さい子連れのママさんたちのサロン状態で耳を塞ぎたくなった・・・
という有様である。
見ているこっちが疲れる。
でもまあ、話を聞くと確かに、「やめちまえ」と言いたくなる歯医者ばかりなのだ。
こっちが「やって欲しい」と言ってるのにあーだこーだ理屈をこねて断ろうとする。
人の歯を見て人格まで見透かしたような気になって、個人的なことにまで上から目線で注意してきたり、軽蔑の色を隠そうともしなかったり、まったく沢田研二に似てなかったり。
そんなのにばっかり当たったら、もう歯医者になんか行きたくなくなる。この世にマトモな歯医者なんかいるのか?と思っても無理はない。

僕は20代前半のころ、一気に歯が劣化していって、半年に一回のペースで歯医者の世話になっていた。
あるとき、初めて行った歯医者で「砂糖って何で歯に悪いんですか?」と何気なく訊いたことがあった。
「甘いものは全般的に歯によくないですよー」と若い男の歯医者が答えた。
「甘いと何でダメなんですか?砂糖より甘いものだったら砂糖より歯に悪いですか」とさらに訊いた。
向学のためであった。むしろデンタルワールドに興味あるフリをしているつもりの、好意からのクエッションだったのだ。
歯医者は憮然としてどこからか持って来たパネルを僕に渡した。
三叉のヤリを持ったバイキンマンが口の中でワイワイやっているイラストが描かれていた。
「これ読んでてください」
そう言い残して歯医者はスタスタと衝立の奥へ消えた。


彼らに客商売は無理である。接客も、サービスも、到底つとまらない。
「みんな忙しいんだから、手入れが行き届いてなくて当たり前、だから僕たちの仕事が成り立つ」
なんてフラットな気持ちで診てくれる歯医者に出会うほうが奇跡。
それが現実でも、彼らはそれを認めまい。

夫婦は良くも悪くも「つながっている」。
連鎖反応で俺の歯まで疼きださなきゃいいけど。。。そわそわ。。

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2016.11.05 | | 未分類(日常、随筆)

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