麻薬と文化と日本人

女優の高樹沙耶が逮捕された。医療利用の大麻の合法化を唱え続けていたことは週刊誌等で読んで随分前から知っていた。
僕の印象では彼女は大麻草をハーブを愛する人のように植物として惚れ込んでおり、随分勉強もしているように見えた。もちろん何がしかの利用(医療としてでも嗜好としてでも)をしたことがなければ大麻の魅力など分かる訳がないのだから、同棲していた男性のうちの誰かにでも教えてもらって、関心を持つようになったのだろう。
同じ芸能人の薬物事件でも、ただの現実逃避や快楽目的ではない(らしい)点で酒井法子や飛鳥とは異なる。彼女には彼女の言い分が山とあるだろうし、逆にこれを機に日本における大麻規制の現実を訴えることが出来るかもしれない。
大衆が耳を澄ましてくれるのは、栄光の時と、石を投げる時だけである。

ところで海外に目を向けると大麻の所持が合法の国が結構ある。
調べると、スペインにいたっては個人レベルでの大麻の使用は合法らしいし、医療用目的の大麻の栽培・使用は多くの先進国で合法もしくは非犯罪とされている。
翻って日本では一般人の大麻の栽培は医療用であろうと何だろうとほぼ不可能と言っていい。一応免許制になっているそうなのだが、免許の申請をしたところで大麻の使用はわが国では「神事等に限る」としているので医療目的でも栽培できない。
日本では古来から大麻草の繊維を「しめ縄」や、お払いの時にシャカシャカ振る、あのハタキみたいなもの(ズバリ「大麻」(おおぬさ)という名前らしい)に使ってきたそうな。
崇高な国である。
・・・まあ、「医療目的」というけれど、その言葉からして曖昧ではある。麻酔に使うのだろうけど、スペインみたいにゆるい国だったら「精神安定の為よ」って言えばそれも「医療目的」に含まれそうな気もするし。

日本人は麻薬によいイメージを持っていない。日本では有名人の麻薬所持・使用は不倫より暴力より差別発言より罪が重い。キャリアが白紙に戻る訳ではないが、ノリピーのように、人によってはそこまで落ちる人も少なくない。欧米では考えられないことだ。それだけ日本人は麻薬にアレルギーがあるということなのだろう。
僕だって大麻など吸ったことがない。大麻を吸ったことがあるという人には会ったことがあるが、見たこともニオイさえ嗅いだことがない。
だから「限りなく透明に近いブルー」みたいな小説を読んでもまったくピンとこなかった。もっとも、あれは大麻ではなく覚せい剤だったと思うが、乱交だ吸引だ注射だと作者の筆が踊れば踊るほどこっちはシラケてしまう。同じ意味でアメリカのビートニクの作家たちも苦手である。
映画もそう。
「イージーライダー」とか「トレインスポッティング」とか「時計仕掛けのオレンジ」とか「パルプフィクション」とか、ドラッグカルチャーを前提にしたような映画は感銘を受けても本当の部分では理解できていないと思う。いや、論理的に「理解」は出来ても「共感」はしていないと思うのだ。出来ない。
ロックもしかり。
ドアーズもストーンズもビートルズもボブ・ディランもヴェルヴェッツもストゥージズもバウハウスもモトリークルーも、ドラッグから生まれたようなアルバムや楽曲がたくさんある。「サイケデリック・ロック」なんてジャンルがあるくらいだからロックは麻薬の力で進化を遂げてきたといっても過言ではない。
良い悪いではなく、事実として「ドラッグ」はサブカルチャーとは切っても切れないものになっている。

かといってこの国でヨーロッパのように大麻の規制を緩めたりしたら、大変なことになるだろう。
もともとそういう免疫も文化もないところにそんな文化を蔓延させたら、いつかの中国みたいに国の死を招きそうである。
欧米人は歴史的にドラッグとの付き合いかたを知っている。嗜む程度に楽しむ方法も限度も心得ている。大麻がファッションになりうる素地がある。
日本人は開国以来さまざまな欧米の文化を取り入れてきた。時には行き過ぎてどこかの志賀直哉みたいに「公用語をフランス語にしよう」とか言い出すことさえあった。
白人に憲法も作らせたしロックンロールもマクドナルドもコカコーラもコッペパンもミニスカートもフリーセックスも自虐史観も気持ちよく受け入れ、国中に染み渡らせた。
でもドラッグは流行らなかった。
海外旅行に行ったらみんな吸ってるのかも知れないが、少なくとも「限りなく透明に近いブルー」のような作品がパイオニアにすらならずにポツンと戦後文芸史の一隅に「新鮮な小説」以上の評価もなく捨て置かれていること自体が、ドラッグ(もしくはドラッグ的なもの)がこの国では好意的に受け取られないことを示している。
逮捕された有名人の出演していたテレビ番組を全部放送禁止にしたり葬ったりするところも、日本人の麻薬アレルギーを如実にあらわしている。(個人的には馬鹿げていると思う)

この季節、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行くと、キバの生えた長い爪の女子高生や、交通事故にあったばかりのようなOLさんたちが破れかけのスカートを夜風にはためかせて闊歩している。あるいはゾンビから逃げ回ってキャーキャーわめいている。
あの光景はカルチャーショックだった。日本人もここまでオープンに、享楽的になれるのかと女子たちの生足・・・いやホラーメイクを見て感心したものだ!
ドラッグなどなくても楽しめるのなら、ドラッグなど不要である。
幸い、僕らはドラッグがなければ楽しめないという情緒不安定な民族でもない。
戦争中、 アメリカ兵は、神風アタックしてくる日本兵はみな麻薬を打たれているのだと信じていた。自分の命を投げうって敵艦に突っ込んでくるなんて狂気の沙汰にしか思えなかったからだ。
しかしそれはセラピストがいなければ恋愛も離婚も出来ない、幼い精神性の国の人の発想だった。
日本人はそんな脆弱(ヤワ)じゃなかった。

大麻を悦楽の為だけでなく、「清め」の道具としても使ってきた国である。
注射など使わなくても国や故郷のために「自分」を捨てることが出来た。

無駄に長い話でした。m(__)m あ~あ・・・。

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2016.10.25 | | 時事問題

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