庭の未来の庭

日本人は昔から「狭い」「小さい」に慣れた民族だった。
江戸時代、蘭学者の緒方洪庵が立ち上げた「適塾」では、塾生にそれぞれ畳一枚分のスペースが与えられた。勉強するだけなら十分かもしれないが、違う。そこで一人ひとりが食事し、寝起きまでするのである。むろん、鮨詰めである。司馬遼太郎原作の大河ドラマ「花神」では、入塾してきた主人公・大村益次郎があまりの窮屈さに辟易するシーンが描かれている。
長屋も狭かったし、戦後になっても学生寮といえば4畳半が普通だった。団地も狭かった。
西洋人に「日本人はウサギ小屋に住んでいる」と笑われた。
狭いのは日本人全員が自覚していたことだが、誰も文句を言わずに耐えていた。
日本人の頭のよさも災いした。
限られた空間でどうすれば団欒できるだろうかと考えに考えて「ダイニングキッチン」なるものを発明してしまった。調理する場所と食事する場所をひとつにして、スペースを節約したのである。だから「DK」という単位というか間取りは日本にしかない。
このように、日本人には広げる、拡大する、大きくするという発想が乏しい。
反対に、省スペース、縮小、コンパクト、軽量化といったマイナス方面は得意中の得意である。
鳴かぬなら、鳴かせてみせようホトトギスなのである。
だから「庭を削ってその分を居住スペースに充てましょう」「ギチギチに家を建てて省スペースの家作りでいこう」
というのは、一見、日本人らしいと思える。
しかしこの国の長い歴史の中で、この国の家から庭をなくすことに同意したのは僕たちが始めてである。
貴族や大名は広大な敷地に庭園を作り、明治以降は「公園」として開放されたそこで庶民は憩いを楽しんだ。戦争中も、どの家にも大抵庭があったから皆でサツマイモを植えてどうにか飢えをしのいだのだ。いま同じ状況になったらギチギチハウスの人たちはサツマイモを植える場所がないから困るだろう。
というのは冗談にしても、この国の歴史にはいつも傍らに「庭」があったといっても過言ではない。
戦後、復興が進むと「住宅よこせ運動」が起こった。それで上述した「ダイニングキッチン」のあるマンションが作られ、爆発的に普及するのだが、その頃の団地暮らしのサラリーマンの夢は当然、「庭付き一戸建てに住むこと」であった。
その頃から80年代までが、日本人が庭を愛した最後の期間だ。
それ以降、庭は「あって当然のもの」から、「なくてもいいもの」になった。
今の日本人はどう控えめに言っても、庭を欲しいとは思っていない。
ハウスメーカーや開発業者がいかに広告やテレビCMで緑溢れる街角や住宅を映そうと、現実では彼らは一般庶民が庭を所有するチャンスを減らしている。
世界の流れから見ても、多分このやり方は逆行している。
緑を生活の中に取り込む、自然と人間の距離を近づけるというのは、もはやトレンドですらない。
常識である。
ここ20年ほどの間で商業施設や公共施設では緑化が当たり前になったが、一般住宅ではペチュニア一株植える余地のない家が激増中という矛盾。せいぜい玄関前の階段や塀の上にプランターを載せてなんとか緑のカーテンを楽しむ、といった具合だ。
さいたま市でも道路沿いの景観を守るためか、沿道の商店や個人宅で木を植える人には助成金が出る。(らしい)
しかし街を歩いてみれば、その助成金を申請する人がどれだけいるのかと思う。
「土」のない家ばかりだからだ。植えたくても植える余地がないのだ。
左手で庭のない家ばかり建てさせながら、右手でエコを叫ぶ。
こんな欺瞞(ぎまん)はない。

まだまだ言い足りないが、長くなるのでこの辺で・・・。
庭のない家の比率は地域により異なるだろうし、人によっては「ギチギチハウスなんか見たこともない」という人もいよう。
しかし認識の差こそあれ、僕の言わんとしていることくらいは分かっていただけると思う。
― 本当に庭を消してしまっていいのか???
「今そこにある危機」として皆で考えるべき時だと思う。

だからこういうものを見ると、複雑な気分になる。
image1baji (2)
ファミマにて。
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これが日本の「庭」の未来の、いや現在の姿なのか。
ギチギチハウスの行き着く先が、コレなのか・・・。

かわいいけど。ちょっと買いたくなった自分いるけど!

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2016.06.14 | | 園芸コラム

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yuhei

Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
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