「庭は要らない」女性たちへ

前回は人口減少社会にもかかわらず狭小住宅が増えている不思議を指摘し、80年代後半~90年代に多くの妻たちが庭作りに目覚め、空前のガーデニングブームを巻き起こした要因を自分なりに分析した。
地域によって差はあるかもしれないが、その頃(バブル期前後)に建てられた家を見ると、大抵「バルコニー」もしくは「専用庭」がついている。庭というほど立派なものではなくとも、何かしら植えられそうなスペースが確保されている。
試しに住宅情報サイトで僕の住むさいたま市内の「築約30年の中古住宅」を検索してみるとこんな感じ。


最近の住宅と比べて土地の使い方が贅沢で、優雅である。(ちなみにどちらの物件も野中の一軒家ではない)
誤解されたくないのだが、僕は何も自分がそうだからといって中古住宅の素晴らしさを説きたい訳ではない。ましてや庭のない家に住む人を馬鹿にしたり、目を覚ませなどと説教したい訳でもない。
僕の言いたいことはいたってシンプルである。

と。それだけである。
僕はこの手の分譲住宅で街の景観を破壊するハウスメーカーに「NO」を叫んでいるのである。
彼らはもともと庭付き一戸建てが1棟建っていた土地に無理やり狭小住宅を2棟3棟建てる。「数」を売って利益を得ようと言う魂胆だ。
広い庭を有した一軒家が更地にされると、その分だけ街から緑が消える。自然が消える。↑の中古住宅の画像を見ても分かるとおり、築30年レベルの家の庭には必ずと言っていいほど庭木や生垣が見られる。それらを伐採して土をコンクリートで固め、オリーブ一本植えられるかどうかという<庭のない家>を2棟建てる。そんな区画が街中に溢れる。
こざっぱりした白いコンクリや新築住宅の壁が眩しく、一見、その界隈までが「開発された」ような気がして気持ちがいいかもしれない。
しかしこんなことを続けていたら確実に日本の街からは「優雅さ」が消え「ゆとり」が消え「発見」が消え、歩いていても何も感じない、無味乾燥とした住宅街ばかりになるだろう。
庭のない家が増えるということは、優しさのない街並みが増えるということなのである。
庭はコミュニケーションを生む。
庭先の植物ほど人と人とを結びつけるものはない。門扉から垣間見えるスイセンや、ブロック塀から覗くクレマチスは自分のものであって自分のものではない。そこを通る誰かもその花を静かに愛でていれば、もう地域の<共有物>である。
そしていつか話しかけられて、自分が誰かに影響を与えていることを知るだろう。それは小さな影響かもしれないが、単純な日常の中では大きな出来事である。
その歓びや発見、興奮は、庭がなければなかなか得られるものではない。
若い人がこれを読んだらきっと「年寄り臭いことを言ってやがる」と思うだろう。
そう、年をとった時のことを考えてみるといい。
子供がいるうちはまだいい。どんな家でも子供がいれば子供中心に全てが運び、自分を忘れられる。抑えられる。夫を忘れられる。しかし子供が手を離れたあと、自分に時間的余裕が持てるようになったとき、庭がないと少し寂しいのではないか。はじめからないのだから欲しいとも思わないかもしれないが、もし万一庭で野菜を作りたくなっても、手遅れである。玄関前の狭いスペースにプランターを置くしかない。
しかし逆に最初から庭のある家なら、なんとでもなるのだ。50代で急にガーデニングに目覚める女性はたくさんいる。いまはまっっっ・・・・たく興味がなくても、子供が中学を卒業する頃にはホームセンターの園芸コーナーに足が向くようになる。
僕は20代後半で庭のある借家に引っ越し、庭の面白さを知った。
それまではまっっっっっっっっっっ・・・・・たくキョーミがなかった!
奥さんもまっっっっっっっっったくのドシロートだった。ネジ一本満足に打てなかった。
僕なんかたった5、6年前まで「庭?うーん・・・管理すんのメンドイからどっちでもいい」なんて言ってたようなヤツなのだ。
持つと、変わるのである。
これからマイホームを探そうと思っている若いカップル、特に女性に聞いて欲しい。
パートナーに遠慮なんかせずに、庭を欲しがってほしい。
確かに夫に突き放されてまでやりたくはないだろうし、それが原因で夫婦仲がギクシャクするのも避けたい気持ちは分かる。庭にこだわるがゆえに選択肢が限られ、やれ駅から遠いだの保育園がないだの予算が足りないだのと色々問題も生じるかもしれない。
でもこれから家を買う人たちが庭を「いりません」と言い続けると、本当にこの国はギチギチハウスだらけになってしまう。若い人が無理をしてでも庭を求めなければ、ハウスメーカーは1棟潰して2棟建てる商法をやめない。
ガーデニングの作業の中で、大人の女性にやれないことなど何一つない。
レンガを積むのも、庭木を剪定するのも、畝を立てるのも、農薬を撒くのも、誰でも出来る。重い物だって持てる。持とうとしないだけだ。やれば何でも出来るはずだ。大人の女なのだから。
「いやーん、こわーい、きたなーい」とお姫さまぶっていたほうが可愛げがあると思うかも知れないが、70才になってもお姫様でいられている人は大抵庭を愛でている。
それに庭があれば、必ず男は口を出してくる。
最初は口だけだったのがサンダルをはいて上から目線で様子を見に来る。そしてろくに関心もないくせにダメ出しをしてくる。で、気付くとホームセンターに一緒について来てたりするのだ。だから重いものは持ってもらえばいい。
年をとったら女性は花に意識が向かうものだ。これはもう好きとか嫌いとかじゃない。LINEをするのと同じくらい自然に花に目が行くようになるのだ。
僕の母も、奥さんの母も、近所のオバサンたちも、みんな花が大好きである。彼女たちが道端で話すことといえば、ペットと花、ペットと花、ペットと花・・・・。
である。冗談抜きで。
無論、みんな庭のある家に住んでいる。

マイホーム選びは一生に一度の買い物である。
で、あるならば30年後の「自分」も見据えて決めるべきだろう。
庭でバラの誘引をして楽しむ自分、庭で娘や孫と一緒にミニトマトを収穫する自分、近所の人に庭を褒められている自分・・・・。
庭は、30年後の自分のバリエーション(可能性)を広げてくれる。
それだけは確かだ。

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2016.06.10 | | 園芸コラム

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Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
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