女が変える、日本の住宅

昨日地下鉄で、一枚の中吊りに目がとまった。
青空と山景色を背景に、広い庭のある家が数棟並び、大きな文字で
「100坪菜園つきのマイホーム」
とあり、中年の夫婦が庭で作業している姿が映っていた。
場所は栃木県内のどこかの里であった。
広い庭の付いている家だとどうしても目が行ってしまう。「お」と思う。
そして自分ならそこをどう演出しカスタマイズするか考えてしまう。ニヤニヤ。。
しかし悲しいのが、やっぱり対象イメージが中高年だったことだ。
都会生活に疲れた中高年に、引退後の「第二の人生」をここで送って頂きましょうというコンセプト。
確かに、若い人で庭の価値を知っている人は少ない。「子供はのびのび育てたいですね」とか言いながら1ミリも庭のないギチギチハウスに住んでいたりする。
子育て世代向けの分譲住宅の広告で、子供が庭を走り回っているようなイメージのものは少ない。
大体がこんな感じだ。

これが若年層にウケる「理想の住環境」だという。
前にも書いたが、この国の人口は減少傾向にある。都内でも空き家が増え、若年層の流出が顕著な豊島区は2040年には「消滅」する可能性があるという試算も出ている。
そんな時代だと言うのになぜか土地の価格は一向に下がらず、一軒当たりの敷地面積は広がるどころか明らかに昔より狭まっているという不思議。1棟解体して、そこにギチギチハウスを2棟3棟建てるのが当たり前になっている。恐ろしいことに、そんな家でもポンポン売れる。
どうして誰もこの状況に異議を唱えないのか不思議で仕方がない。
しかしよく考えれば簡単なことだ。
本当は誰も広い家になど住みたいと思っていないのである。
庭もない、日当たりも悪い、派手に夫婦喧嘩をしようものなら全部近所中に筒抜けになるような環境が、現代日本人の理想なのだ。皆で狭い場所で「押しくらまんじゅう」してたい民族に変わったのだ。
そうとでも思わなければ説明が付かない。
「変わった」というのは、かつてはそうでなかったからだ。

一昔前まで、「マイホーム」といったら「庭付き一戸建て」を意味した。
今の子育て世代(30代~40代前半)の人たちが育った実家(戸建なら)には大抵、庭があったはずである。
でも自分が「親」になると、特に庭を求めない。
なぜ変わったのか―・・・。
昭和の庭は<男のステータス・シンボル>だった。広い庭を持っている男は度量が大きく、知的で、裕福そうに見えた。つまり来客や近隣住民に対して、自分を大きく見せることが出来た訳だ。そのための<ツール>だった。庭は男の「世界」だった。
「サザエさん」を見ても、庭いじりするのは波平と決まっている。フネやサザエは庭にはノータッチである。せいぜいワカメやタラちゃんが球根を植えるくらいである。
山田太一に「夕暮れて」というドラマがある。昭和58年にNHKで放送されたドラマだ。岸恵子演じる専業主婦がかつての同級生と不倫するかしないかのライン際交際をハラハラドキドキモゾモゾ描いた作品である。
そのドラマの中の家にも庭があるのだが、岸恵子は土なんか触らない。植木を植え替えたり、剪定したりするのは夫役の佐藤慶の仕事である。
が、土に触らないのはそれが岸恵子だからではない。確かに岸恵子が園芸している姿など絶対に想像できないし、そもそもあの存在感で専業主婦というのも無理があるのだが、そういう問題ではなく、それが当時の夫婦の平均的な役割分担だったのではないかと言いたいのである。
女は家事・台所、男は仕事、休日は庭。
今はどうか。
庭に男はいるか。
いない。
では台所にいるかといえばそうでもない。
どこにもいない。
女に庭を奪われてそうなったのではない。自分から放棄したのである。ある年代から、男どもが庭を軽んじるようになり、自分から捨てたのだ。
代わりに女たちが庭に出るようになった。
女たちは率先してスコップを手に取り、長靴を履いて花壇を作り、教室に出かけ、友達を作り、当時少しずつ増え始めたホームセンターや大型園芸店に出かけていった。市民農園を借り、野菜を作った。
女が中心になって何かを始めると必ず市場が反応する。
園芸雑誌が次々創刊され、ファッションと結びついた色々なオシャレなアイテムが開発され、雑貨が輸入された。そして「ガーデニング」という言葉が少しずつ広がっていった。
90年代の園芸ブームはそうやって起こった。
あれはガーデニングによる女性解放運動だった。
もはや庭に、男たちの居場所は完全になくなった。

そして今、僕は声を大にして言いたい。
女たちよ、もう一度庭を欲しがれ!
と。
女が欲しがれば全てが変わる。

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2016.06.09 | | 園芸コラム

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yuhei

Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
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