日陰で語る

うちは借家である。正確な築年数は知らないが間違いなく30年は経っている古い家だ。古いけど家主自身が大工の棟梁だったことと、家主の一人娘と孫たちに住まわせる家だったこともあり、なかなか頑丈に作られている。
この家の庭に植えられている庭木はほぼ全て、家主である棟梁が植えたものだ。柿も梅もダイダイもツツジもキウイもかなり前からこの家にあって、棟梁が亡くなり、娘家族も(ここには書けないが事情により)この家を出ざるをえなくなっても家と庭はそのまま残った。その後、誰がどのくらいここに住み、去って行ったかは分からないが、僕がネットでこの家を見つけたときは既に2年近く空き家であった。
内装は荒れ放題、壁紙ははがれ、床には所々穴が開き、網戸もボロボロだった。どう見ても人に貸すことなど想定していない物件だったが、庭の広さだけは文句なしだった。
さいたま市内で、同じ立地条件(駅までの距離や利便性、人口密度)で、ここまで広い庭を持つ借家はない。
別に自慢しているわけじゃない。こんなことが自慢になる時代はとっくに終わっている。
時代の要請として、庭は潰す方向に進んでいる。土のままなんてもってのほか、潰してカーポートにしたほうが客が集まる。
まだ次の家を探していたころ、不動産屋の作ったこの家の紹介ページを見た。
「広い庭で園芸できます」と書いてあった。
写真も載っていた。雑草ボーボーの地面と、小屋と、ダイダイが映っていた。確かに広そうだ。
僕個人はそれを見て「キターーーー!次に住む家決まったわー!」と、独り快哉を叫んだものだが、一方でこうも思った。
「これを見てワクワクする人がどれだけいるんだろう?」と。俺くらいじゃね?と。
一般消費者の目から見て「広い庭があります」というのは、今の時代、どこまでセールスポイントになるんだろう。むしろネガティブな情報なのではないか。そんなことより「屋上庭園」とか、「バルコニー菜園」とか、そういう言葉の方が喜ばれるんじゃないか。
「土の庭はないです。でも屋上やベランダでちょっとした家庭菜園みたいなことは出来ちゃいますヨ!」
このくらいが今の人には受けるに違いない。
・・・なんて考えながら半年後に住むことになる家の間取り図を眺めていた。
ちゃんとした庭は要らない。でも庭的な空間は欲しい-。
現代人の潔癖志向によるのか、生活空間からなるべく土を排除しようという動きは確かにあって、コンクリートの上でコンテナを使って<少しだけ園芸>をする人も増えてきている。
この家も道路沿いに建っていたらそういう家になっていたかもしれない。
しかしここはご存知のとおりあの細長い通路を抜けた上に建っている。カーポートを作ったって車が入らない。駐車場は別に借りるしかない。お陰で「持て余し物件」として残ってくれた。

庭を潰す方向で時代が動いているのも、現代人が生活から土を遠ざけようとするのも止めようと思って止められるものではない。庭なんか要らないと思っている人にムリヤリ庭つきの一戸建てに住まわせたって雑草が喜ぶだけである。
僕に出来ることといったら、こうして庭のある家で暮らす楽しさを発信し続けることくらいである。(楽しいことばかりじゃないけど)
だからこうやって日陰の庭の落ち葉を集めつつ

ほとんど腹ばいになってヘレボの写真を撮ったりする時間が

僕には必要で

これを見た誰かが

「自分も庭のある家に住んでヘレボ植えまくりたいわ!」とか

思ってくれたらそれは最高だ。
そう思われる為に、そう思わせるような庭にしたい。

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2016.03.23 | | 園芸コラム

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yuhei

Author:yuhei
築30年の借家でホームオフィスをしながら理想の庭づくり、理想のインテリアを探求する日々の記録。
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