2018-11-24 Sat
連休中日の土曜日。珍しく昼間から映画を観た。『クリード~チャンプを告ぐ者~』という映画だ。
映画『ロッキー』で主人公ロッキーのライバルであり親友でもあったアポロ・クリードの息子をロッキーがいっぱしのボクサーに育て上げ、現チャンピオンに挑むという話だ。
シルベスター・スタローンは1946年生まれ(昭和21年生)だから現在72歳。
劇中では、さすがにスパーリングの相手も出来ないし階段もシャキシャキ上がれない「老いたイタリアの種馬」になっている。
実際のスタローンはどうだか知らないが、その老いっぷりがワザとらしくなく、茶目っ気と悲哀と孤独を全身に滲ませた演技は素晴らしく、この映画でゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞したのは納得である。
スタローンといえば一般的には「筋肉だけで知性ゼロ」みたいに思われがちだが、まったく違う。
出世作『ロッキー』は彼自身が3日で書き上げた脚本を映画会社に売り込んで誕生した。以降『ロッキー』シリーズの大半で監督・脚本・主演の一人3役をこなし、『ランボー』シリーズでも全作品で脚本に関わっている。
かなり辣腕なビジネスマンでもあり、良い映画を撮る術を熟知した優秀な映画監督兼俳優だ。

スタローン映画のいいところは、<観客が観たいものを観せる>
という姿勢だ。
ハッキリ言ってこの『クリード~チャンプを告ぐ者~』は王道ど真ん中のベタベタ映画である。
というか、「ロッキー」1を主人公をアポロの子供に変えて、現代を舞台にしてやっているだけと言われればそうだ。
だがそのベタベタが良いのである。
観客が見たいものはそれなのだ。
老いたロッキーとアポロの隠し子の友情であり愛であり、偉大なチャンピオンを父に持った若き主人公の葛藤、そして父へのリスペクト・・・もっと言えば「ロッキー伝説」へのリスペクト。
過去のシリーズのアポロの映像を随所に散りばめ、往年のファンが思わずニヤリとするようなシーンやセリフを織り交ぜる。
監督・脚本はスタローンではなくライアン・クーグラーというまだ弱冠32歳の若手の監督だが、正面からなんの衒いもなく作りきったところにこの人の『ロッキー』シリーズへの愛が窺える。
コテコテの有名映画の続編やスピンオフとなると監督によっては自分の色を出したがったり、解釈を変えてみたり、色々いじってはファンから不興を買うことが少なくないが、最近はそういう変な上昇志向を持たずに、オリジナルへのリスペクトをファンと同じ目線の高さで持ちながら監督できる人が増えてきた。
『スターウォーズ~フォースの覚醒~』の監督のJJエイブラムスなどは、生みの親であるジョージ・ルーカスがフルCGで新3部作を作って大失敗したのを見ていたからか、フルCGを止めて30年前の第一作のように「手作り感」にこだわってクリーチャーを着ぐるみに戻した。
そしてずっとファンが観たいと思っていた新しいスターウォーズを作った。
人気シリーズにおいては、監督の「自分色」なんて、ファンには無用な自己満足にしか映らない。
もしやるなら『シンゴジラ』の庵野のように、時代のニーズを的確につかんだ上でやるのがベターであろう。
今の時代の空気ともズレたまま、しかも自分の好きなキャラクターが好きでもない監督の自己満足の餌食になるのを観るほどファンにとって辛いものはない。
というわけで、『クリード~チャンプを継ぐ者~』、秀作です。
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