2014-01-02 Thu
僕が育った家庭には『正月』というものがなかった。といっても別に外国人じゃない。普通の日本の家庭である。一般的には正月といえば年越しそば、紅白歌合戦、門松、お雑煮、おせち、初詣、といったところだろうが、僕がそういう「ザ・正月」みたいな慣習にはじめて触れたのは結婚してからである。それまで年越しそばなんて何かのメタファーで、実際には食べるものではないと思っていた。大体いつどのタイミングで食べればいいのか分からなかった。我が家は大晦日といってもご馳走など出なかった。普通にしょうが焼きとかラーメンとか焼き魚が出てきて、紅白を見ているうちに眠くなって全員10時には寝るというスタイルであった。これは母の性格による。何事も面倒臭いことはしない主義である。
そんな母でもお雑煮だけは作っていた。
元旦の朝はお雑煮である。お雑煮と食パン。あとコーヒー。おせちなどない。見たこともない。昼もお雑煮。小腹が好いたらスナック菓子を食べる。そして夕食は普通にしょうが焼きとかラーメンとか焼き魚である。そしてテレビを見て9時か10時に寝る。初詣にも2、3回しか行ったことがない。
正月といっても、ただの冬休みのうちの数日に過ぎなかった。
そんな家庭で育ったから奥さんの実家で正月を迎えたときは同じ国かと思うくらい驚いた。箸はちゃんと紙袋に入ってるわ、しかも名前書いてあるわ、クリームシチューにしか見えないお雑煮が出てくるわ、皆で順々にみりんを飲むわ、おせちもそれまでテレビの中でしか見たことのないような手の込んだもので、これが「モノホンの正月か!」と圧倒された。しかし人間というのは変なもので、そんな至れり尽くせりの「ザ・おせち」「ザ・正月」を前に、お雑煮とパンだけの元旦モーニングを懐かしく思ってしまう自分もいた。
今年は夫婦二人だけの正月である。
親譲りで、正月だからといって何かしようと思わない僕も今年は自宅兼事務所開業の記念すべき一年目なので景気よく「ザ・正月」にしようと思い、色々やった。
たまたま植えられていた庭の若松を切って門扉にくくりつけ門松にした。おせちの材料も買って、自分で松前漬とお煮しめを作った。お雑煮も作った。奥さんには申し訳ないが関東風のお雑煮である。このお雑煮で少しもめた。
元旦の朝、奥さんが起きる前に雑煮を温め、餅を焼いたら起きてきた奥さんに怒られた。おせちをまだ重箱に盛っていないのになぜお雑煮を作るんだという。「お雑煮というのは朝飯代わりに食べるものだ」と言い返したらケンカになった。お雑煮はおせちと一緒に食べるものらしい。知らなかった。お雑煮は味噌汁とは違って餅も入ってるしそれはそれで完結した料理だと思っていた。
「そんなにおせちと一緒に食べたいのなら早く起きて用意しておくがいい」と言ったら「あなたはいつも予期しないことをする。そんなことされるとは思わなかった」という。
これだから正月は嫌いなのだ、とつくづく思ったが結局気を取り直してお歳暮でもらった金箔入りの日本酒を夫婦で飲み交わし、おせちをつつきながら『風とともに去りぬ』を観た。正月らしい正月になった。
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